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 主な放射線が出そろったところで、放射線について詳しくお話ししていきたいと思います。まずは、用語の説明をしましょう。この章では、大切な用語や概念も登場しますし、いよいよ定量的な話も出てきますので、よくよく頭に入れていってください。

放射性同位体と放射性物質

 同位体のうち、不安定で放射線を出すもののことを、「放射性同位体(Radioisotope)」と呼びます。たとえば、水素の同位体には、天然に存在するものでは、水素11H)、水素22H)、水素33H)のみっつがありますが、このうち、水素1と水素2は安定で、水素3だけが不安定な放射性同位体となります。

水素の同位体

 ちなみに、この水素だけは特別あつかいされていて、同位体ごとに専用の名前と元素記号が与えられています。水素2が「重水素(デューテリウム)」で記号がD、水素3が「三重水素(トリチウム)」で記号がTです。
 放射性同位体を含む物質を「放射性物質」と呼びます。

放射能とは

 放射性同位体や放射性物質が放射線を出す能力のことを「放射能」と呼びます。具体的には、1秒間あたりに出す放射線の数で表わされ、単位はBq(ベクレル)です(1)たとえば、100秒間に4,600個の放射線を出すものがあったとすると、その放射能は46Bqとなります。

放射線・放射性物質・放射能

 この単位の名は、ウランから出る放射線(α線)を発見したフランスの物理学者であるアントワーヌ・アンリ・ベクレルからとっています。ベクレルは、この功績で、ノーベル物理学賞を受賞しています。
 ところで、日本のメディア(特に民放テレビ局)とそれに感化された人たちは、なぜか、放射性同位体や放射性物質のことを放射能と呼びたがりますが、それはまったくの誤りです。自動車のことを「速度」と呼ぶくらいまったくの見当はずれで、なぜそう呼びたがるのか、僕は不思議でしかたありません。
 学者の中にすら、「一般人にはそのほうがなじみがあるから」などという意味不明な理由でそういう使い方をする人もいますが、そんなことを続けているから、いつまでたっても放射線について理解が広まらないのです。
 たかが言葉の問題ではないか、と言う人もいるかもしれませんが、人間が言葉でコミュニケーションをとっている以上、言葉はとても大切です。メディアでも個人でも、そのように呼んでいる人がいれば、それは自分が話している内容すらまったく理解せずに口に出しているということを証明しているようなものですので、そういう人の言うことはまったく信用に値しないといえましょう。「放射能がくる」などと表紙に書いてしまうような雑誌は、1文字すら読む価値がないどころか、そのバーコードにすら価値がありません。

 また、単位質量あたりの放射性物質の放射能を「比放射能」と呼びます。たとえば単位は、1gあたりであればBq/g、1kgあたりであればBq/kgになります。放射性物質が気体の場合には、Bq/ccなど、単位体積あたりで放射能を表わすことが多いです。比放射能の例は、

ポロニウム210 170,000,000,000,000 Bq/g ( 170 TBq/g )
セシウム137 3,200,000,000,000 Bq/g ( 3.2 TBq/g )
トリチウム 360,000,000,000,000 Bq/g ( 360 TBq/g )

です。セシウム137を1g持ってくれば、その放射能は3.2兆Bqとなる、ということです。福島第一原子力発電所事故で一躍有名になったセシウム137よりも、ポロニウム210は2けたも高いです。また、トリチウムが意外なくらい高いのは、トリチウムがポロニウム210よりも70倍も軽いからです。そのため「gあたり」とすると高くなるのです。
 この量については、第10章に各放射性同位体ごとに書いておきます。

半減期とは

 原子核が放射線を出すタイミングはいつなのでしょうか。それぞれの原子核に対しては、いつ崩壊するかはそれこそ原子核しだいで、確率としてしか表わすことはできません。たとえば宝くじがいつ当たるかなんて、誰にもわかりません。それがわかれば、当たるときだけ買えばいいので、確実にもうけることができます。
 宝くじといえば、自分を含め知り合いに誰ひとりとして一等賞が当たった人を聞いたことがない、そんなことはありませんか。でも、発表された結果を見ると、100人もの人に7億円が当たっている。その人たちはいったいどこに…もしかしてこれは陰謀で、本当は存在していないのに当選者がいるかのように発表しているだけでは…
 なんて疑ってしまうほど、いつ当たるかなんてわかりませんよね。しかしそれは自分の身の回りしか見ていないという少なすぎるサンプル数のためにそう思えるだけで、サンプル数を多くすればかならず当選者はいるものです。ある特定の人に宝くじが当たるかどうかなどさっぱりわからなくとも、購買者を大量に集めれば、一定量の当選者が存在し、そこから平均的な当選率が計算できるでしょう。
 放射線に関しても同じで、ある確率で崩壊しているのであれば、同じ種類の原子核を大量に集めて測定すれば、平均化された「崩壊時間」がわかるのです。
 じゅうぶん大量に同じ種類の放射性同位体があったとして、それが時間と共に崩壊していく現象を観察するとしましょう。

 崩壊すると別のものに変わってしまいますので、最初の状態のものは減っていきます。観察を開始してから、最初の状態のままのものがe分の1まで減ってしまった時間を、その放射性同位体の「寿命」と呼びます(eはネイピア数と言って、自然対数の底です(2)。eは2.7程度ですので、37%程度にまで減ってしまう時間を表わしています。
 また、e分の1ではなく、2分の1、つまり半分にまで減ってしまう時間を、「半減期」と呼びます。寿命はわれわれ物理学者の間ではなじみ深いものですが、一般的には、半減期のほうがなじみ深いことでしょう。ですので、以下、本サイトでは、半減期のほうを使うこととしましょう。
 半減期は、放射性同位体によって決まっています。また、その放射性同位体をあつかううえでとても重要な値ですので、あらゆる放射性同位体について測定されています。例をあげますと、ポロニウム210が138日、トリチウムが12年、炭素11が20分です。
 この量についても、第10章に各放射性同位体ごとに書いておきます。

半減期と放射能の関係

 半減期が表わす意味について考えてみましょう。
 半減期が長いということは、なかなか崩壊しないということですので、不安定核の中では比較的安定しているほうだと言うこともできます。いっぽうで、いつまでも残りつづける厄介な放射性同位体だと考えることもできます。
 反対に半減期が短い同位体、たとえば炭素11などは、20分で半分になりますから、40分で1/4、1時間で1/8になります。1日たてば、1/5,000,000,000,000,000,000,000くらいになってしまいますから、ほとんど消滅したも同然です。
 ところが、逆に考えれば、短時間でほとんどが崩壊してしまうということは、その時間内に大量の放射線を出しきってしまうということであり、放射能は高いことになります(ちなみに炭素11の比放射能は32,000,000TBq/gです)
 ある放射性物質の放射能は、そこに含まれる放射性同位体の数に比例し、半減期に反比例します(3)

半減期は外部からの作用によって変わらない

 ちなみにこの半減期は、温度や圧力といった環境では一切変化しません。福島第一原子力発電所事故後に急増した詐欺師たちがうたうような「なんとか菌」や化学反応的なものでも、まったく変えることはできません。それは考えれば当然のことで、半減期は原子核のレヴェルで決まっていることで、化学反応はそのはるか外側の電子で起こっていることだからです。「なんとか菌」にいたっては、それよりもはるかに巨大な生物学的スケールの働きですので、原子核に影響を及ぼしようがないのはあたりまえのことなのです。

 ここで、単にスケールのことを考えただけでも、「なんとか菌」のおかしさに気づきます。
 細菌の大きさは1 μm(つまり0.000001m)程度です。それに対して、原子核のサイズは0.000000000000001m程度です。9けたもサイズが異なります。皆さんの指先は1 cm(0.01m)程度の大きさですが、それより9けた小さいというと、0.00000000001m程度となり、第1章でお話ししたとおり、原子の大きさの1/10程度です。たとえばみなさんは、自分の指で、原子ひとつひとつをつまんで、取りあつかうことできますか。
 仮に「なんとか菌」が化学反応を利用しているにしても、化学反応のスケールはせいぜい原子の大きさで、こちらも第1章でお話ししたとおり、原子核はその10万分の1のスケールですから、5けた違います。指のサイズから考えると100 nm(0.0000001m)、ウィルスのサイズですね。指でウィルスを個別につまんで処理できる人は、「なんとか菌」を信じてもよいのではないでしょうか。
 スケールが異なるというのは、そういうことなのです。ところがそのようなスケール感覚がまったくないと、こういった詐欺にだまされやすくなります。スケール感覚を身につけるのは大切です。

eVとはなにか

 ここで、放射線の分野でよく使われるエネルギーの単位についてご説明しましょう。
 みなさんがふだんの生活でもよく使う電圧の単位で、V(ヴォルト)というものがありますね。iPhoneの充電器は5Vくらい、ノートPCのACアダプターは10〜12Vくらい、家電製品は100Vくらいで動くでしょうか。なにげなく使っているこのVは、じつは「単位電荷あたりのエネルギー」を表わす単位です。中高生の頃の授業を思い出せば、確かにそう教わったはずです。エネルギーをJ(ジュール)で、電荷量をC(クーロン)で表わすと、電圧の単位Vは、

V = J / C

となります(電荷については第1章を復習してください)。逆に言うと、電圧に電荷量を掛ければ、エネルギーとなります。

CV = J

 このように、電荷量にC(クーロン)を使えばエネルギーの単位はみなさんがよく見なれたJ(ジュール)となるのですが、その代わりに、電子の電荷量e~ 1.6 × 10-19 Cを使えば、eV(エレクトロン・ヴォルト)というエネルギーの単位になります。ですから、eVは、

1 eV ~ 1.6 × 10-19 J

となります。
 Jと比べると19けたも小さい値ですが、電子や核子をひとつずつあつかうにはちょうどよい単位です。電子のような荷電粒子は電場によって加速できますが、先ほどの例でいうと、iPhoneの充電器を加速に用いれば5eVのエネルギーをあえることができ、ノートPCだと10eV、家電製品だと100eVの、それぞれエネルギーをあたえることができます。

接頭記号

 また、ここで、数値になれていない方のために、接頭記号についてまとめておきましょう。接頭記号とは、たとえばm(メーター)の1000倍を表わすときに、1000の代わりにk(キロ)をつけて、km(キロメーター)などと表わす場合の、kのことです。

接頭記号
f femto × 10-15 ( × 0.000000000000001 )
p pico × 10-12 ( × 0.000000000001 )
n nano × 10-9 ( × 0.000000001 )
μ micro × 10-6 ( × 0.000001 )
m milli × 10-3 ( × 0.001 )
c centi × 10-2 ( × 0.01 )
h hecto × 102 ( × 100 )
k kilo × 103 ( × 1,000 )
M mega × 106 ( × 1,000,000 )
G giga × 109 ( × 1,000,000,000 )
T tera × 1012 ( × 1,000,000,000,000 )
P peta × 1015 ( × 1,000,000,000,000,000 )

 大きいほうは、メガだのギガだのテラだの、21世紀のわれわれは日常的に使いますが、小さいほうはあまり使わない人も多いかもしれません。小さいほうでも、ミリやセンチはよく使いますね。大きいほうでも、昭和の昔からキロはよく使っていましたし、ヘクトも、気圧を表わすときに、パスカル(Pa)の頭につけて使ったり(ヘクトパスカル)、面積を表わすときに、アール(a)の頭につけて使ったり(ヘクタール)していると思います。

α線が持つエネルギー

 第2章で放射線が危険なのはエネルギーが高いからだと言いましたが、では、それはいったいどれくらいの大きさなのでしょうか。

 まずはα線からです。
 α線のエネルギーは、直接測定する以外に、計算によっても求めることができます。みなさんは、中高生の頃に学んだエネルギー保存則をおぼえていますでしょうか。反応の前後でエネルギーの総和は変わらない、というものです。

210Po → 206Pb + 4He

 たとえばポロニウム210のα崩壊だと、反応前のポロニウム210の全エネルギー(質量と運動エネルギーの和)と、反応後の鉛206の全エネルギーとα線の全エネルギーの和は、同じでなければなりません。
 言いかえれば、α崩壊で新たに発生する運動エネルギーは、ポロニウム210の質量と、鉛206とα線の質量の差となります。
 この質量の差の分の運動エネルギーが、鉛とα線とにいくらずつ配分されるかは、これまた中高生のときに学んだ、運動量保存則から計算できます(4)
おぼえていない方のために結論だけ言いますと、最初ポロニウム210が止まっているとすると、鉛とα線の運動量は大きさが同じで正反対の向きとなりますので、エネルギーの配分は、質量の逆比になります。質量数は鉛とα線がそれぞれ206と4ですから、運動エネルギーの比は4 : 206になります。α線に比べて鉛は圧倒的に重いので、運動エネルギーの大部分はα線に配分されることになります。

 具体的な数字としては、この反応で放出されるエネルギーは5.4MeVで、それが、鉛に0.1MeV、α線に5.3MeV、それぞれ配分されます(4)
 このように、α線のエネルギーは、反応式がわかれば、一意に決まります。

β線が持つエネルギー

 つぎに、β線です。
 α崩壊の場合は、放出されるものがα線だけでしたから、反応式が決まればエネルギー保存則と運動量保存則から放出されるα線の運動エネルギーも決まりましたが、β崩壊の場合は、放出するのが電子(陽電子)とニュートリノという2つの粒子であるために、運動エネルギーもこの2つの粒子と変化した原子核の3者で分け合うことになります。ですから、β線の運動エネルギーは、ある反応について、一意には決まらず、最大値だけが決まります(5)

 トリチウムだと最大19keVです。セシウム137だと最大510keVです。

γ線が持つエネルギー

 最後に、γ線です。
 原子核に余分にたまったエネルギーが放出されるのがγ線でしたから、ふつうに考えればどんな量のエネルギーがたまってもよく、したがってどんなエネルギーのγ線が放出されてもよさそうなものです。が、そこは量子の世界の不思議さで、原子核のエネルギーのレヴェル(準位と呼びます)は決まった値を取り、したがって放射性同位体ごとに決まった余剰エネルギーがたまります。ですからγ線のエネルギーは放射性同位体ごとに決まっています。そのため、逆に、放出されるγ線のエネルギーを測定すれば、それを出した同位体の種類がわかります。
 たとえばセシウム137がβ崩壊を起こしてできたバリウム137から出るγ線のエネルギーは、660keVです。

塵も積もれば山となる

 これらのエネルギーがどれくらい高いのか、簡単に比較してみましょう。γ線は光の一種なので、これを例にとります。
 われわれがふだん目にしている太陽などからの光、可視光では、そのエネルギーは2~3eV程度です。660keVといえば、その200,000 ~ 300,000倍にもなります。同じ光と言っても、けた違いに高いエネルギーを持っていることがわかるでしょう。この高いエネルギーが、われわれにとって危険となるのです。
 具体的にどのような働きでわれわれに危険を及ぼすのかは、第4章と第5章でお話しします。

 比放射能とひとつひとつの放射線のエネルギーがわかれば、それをかけあわせることで、その放射性同位体が放つエネルギーが計算できます。
 たとえば、ポロニウム210の場合、比放射能は170TBq/gで、1回の崩壊でのエネルギーは5.4MeVですから、これをかけあわせ、Jの単位に直すと、驚くなかれ、150W/gという値が得られます(6)たった1gのポロニウム210を集めるだけで、150Wという、蛍光灯4本分もの出力が得られるのです! これをじかに手で持てば、とても熱く感じられるでしょう。
 たった1gでこれだけのエネルギーを出しているのはなんだかすごいことのようにも思えます。しかし、この1gという量は、普段の生活の場面では微量に感じられるかもしれませんが、放射線の世界では、膨大な量なのです。それについては、第7章の冒頭でもすこしふれておきます。

 放射性物質が放出するエネルギーがどれくらい大きいかは、われわれ日本人は身をもって体験しました。福島第一原子力発電所事故です。日本人の中には誤解している人も多いようですが、同事故は、チェルノブイリ原子力発電所事故と違って、原子炉の核分裂反応そのものはきちんと停止させることに成功していて、核分裂反応の暴走は起こっていません。しかし、停止後も、原子炉内には核分裂によって生じた放射性物質が残っていて、それが放射線を出します。その熱量は、発電に使うにはほど遠いのですが、それでも、放っておくと「塵も積もれば」で膨大な熱量になります。そこで、その分のエネルギーを取り除く、つまり冷却しなければなりません。その冷却に失敗したために、その熱によって原子炉内が加熱され、燃料はじめ炉心部分が溶けてしまう、メルトダウンが起こったのです。
 これも誤解している人が結構いるようですが、メルトダウンは、放射線特有の作用によって炉心が溶けるわけではなくて、たんに、その融点を超える温度に達するほど加熱されたから溶けるだけです。べつに放射線でなくとも、外部から熱を加えたとしても、融点を超えれば、同じことが起きます。ただ、あれだけの物量を外部から加熱するのは大変なことで、そういう意味で、放射線がもつエネルギーの大きさを実感するできことだったと言えるでしょう。
 放射線のエネルギーが、塵も積もれば山となる、もうひとつの例をあげておきましょう。それは、地熱です。日本列島は火山帯そのものですし、日本人にはなぜか温泉が好きな人も多く、また、火山の噴火による被害も多いので、われわれに取っては身近な存在かも知れません。その地熱は35TW程度の熱量をもつと言われ、熱の逃げ場がない地球中心附近では、金属ですら液体状に溶けてしまっています。その地熱の発生源にはいくつかありますが、その半分程度は、なんと、放射性同位体の崩壊熱なのです(7)

 放射線のエネルギーについて考えたところで、次章では、そのエネルギーが物質にどのような影響を与えるのかについて考えましょう。

第3章まとめ

  • 放射線を出す同位体を放射性同位体、放射性同位体を含む物質を放射性物質という
  • 放射性同位体が単位時間あたりに出す放射線の数を放射能という
  • 単位質量あたり、または単位体積あたりの放射能を比放射能という
  • 半減期ごとに、放射性同位体は半分になり、放射能も半分になる
  • ある決まった反応に対して、α線とγ線のエネルギーは一意に決まるが、β線のエネルギーは最大値だけが決まる
  • なんとか菌()にだまされないためにも、スケール感覚を身につけよう
  • 放射線が出す熱ヤヴァい
参照・注
  1. (1) 正確には、1秒間当たりに起きる崩壊の数なのですが、実際われわれが崩壊の数を数えるには、そこから出てくる放射線の数を測ることになりますので、ここではこうしておきます。
  2. (2) eの定義は、
    e=\lim_{n to \infty}(1+{1/n})^{n}
    です。このeは、xについての指数関数exを考えた場合に、
    (d/dx)e^{x}=e^{x}
    が成り立ちます。
  3. (3) この関係をより定量的に考えると、比放射能と半減期の関係式が得られます。
     その放射性同位体の質量数をA、半減期をTとすると、比放射能Sは、
    • S~{(4.17*10^{23})/AT} [Bq/g] 半減期の単位を「秒」とした場合
    • S~{(1.16*10^{20})/AT} [Bq/g] 半減期の単位を「時間」とした場合
    • S~{(4.83*10^{18})/AT} [Bq/g] 半減期の単位を「日」とした場合
    • S~{(1.32*10^{16})/AT} [Bq/g] 半減期の単位を「年」とした場合
    となります。試しにポロニウム210(半減期138日)で計算してみると、
    S~{(4.83*10^{18})/(210*138)}~(1.67*10^{14}) [Bq/g]
    となり、先ほどの比放射能170TBq/gと合っています(170TBq/gは2けたにまるめた数字で、3けたの精度でいうと167TBq/gです)。
  4. (4) 学生の方は、自分で計算してみましょう。α線であれば、非相対論的に(古典的に)求めても大丈夫です(第4章を読めば理由がわかります)。
    ポロニウム210の質量から、鉛206とα線の質量を引くと、その差は、5.4MeVです。これをKとし、このエネルギーが鉛206とα線に配分されます。鉛206とα線の質量と速度を、それぞれ、MmVvとすると、運動量保存則から、
    MV=mv
    となり、エネルギー保存則から、
    (1/2)MV^{2}+(1/2)mv^{2}=K
    となります。これを解くと、
    (1/2)mv^{2}={M/(M+m)K}
    が得られます。ここでの質量は正確にわからなくとも、比だけですから、質量数でじゅうぶんです。M : m = 206 : 4で、K 〜 5.4MeVとすると、
    {206/(206+4)*5.4~5.3}
    がえられます。これがα線のエネルギーです。
  5. (5) エネルギーを求める計算で解くのは、(4)のように、運動量保存則とエネルギー保存則の2つの式です。α線の場合は、未知数が、α線のエネルギーと原子核のエネルギー((4)の例だと、鉛206のエネルギー)の2つなので、一意に求められます。が、β線の場合は、未知数が、電子のエネルギー、ニュートリノのエネルギー、原子核のエネルギーと3つなので、2つの式からは一意に求められません。
  6. (6) 学生の方は、これも自分で計算してみてください。
    170×1012 Bq/g × 5.4×106 eV × 1.6×10-19 J/eV 〜 150 W/g
  7. (7) 『Partial radiogenic heat model for Earth revealed by geoneutrino measurements』 Nature Geoscience, 4, 647–651 (2011)

※通常、引用論文は、「著者名、雑誌名、巻数、ページ数、年」、の順で書きますが、本サイトでは、みなさんがぐぐりやすいよう、著者名の代わりにタイトルを書いてあります


著者プロフィール

多田将 (ただ・しょう)

1970年大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。

著書『すごい実験』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>』『ニュートリノ』。